新築住宅の設計をしていて気が付いたのは「本物が使えない」ということでした。本物というのは何も、贅沢なものではなく、木や石や土などの自然素材や、タイル、障子紙などの昔からある加工素材のことです。現代では、それらはプラスチックを似たようなテクスチャに加工着色した偽物にすりかわっています。そのほうが安いからです。また、手作りのものが少なくなり、工業製品ばかりになりました。人が暮らす空間が、プラスチックの偽物で包まれる一方、本物の素材と手作りの家が解体されている。これは本当にもったいないことだと思いました。一方で、そのような古民家は、古びていても必ず再生できること知り、いつしか古民家を再生することが、建築士としての使命と感じるようになりました。第一歩は、自社の事務所。100年以上前に建てられた古民家を、再生して事務所として使用しています。